自分の都合で価格を決めようとする不動産屋
あくまでも不動産屋はアドバイスをする立場であって、売り出し価格を決定する権限なんてありません。
「その値段じゃ売れませんよ!」なんて言う不動産屋の言葉は聞き流せば良いのです。
これは、宅地建物取引業法にも明記されています。
(媒介契約)
第三十四条の二 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約(以下この条において「媒介契約」という。)を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
一 当該宅地の所在、地番その他当該宅地を特定するために必要な表示又は当該建物の所在、種類、構造その他当該建物を特定するために必要な表示
二 当該宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額
三 当該宅地又は建物について、依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することの許否及びこれを許す場合の他の宅地建物取引業者を明示する義務の存否に関する事項
四 媒介契約の有効期間及び解除に関する事項
五 当該宅地又は建物の第五項に規定する指定流通機構への登録に関する事項
六 報酬に関する事項
七 その他国土交通省令・内閣府令で定める事項
2 宅地建物取引業者は、前項第二号の価額又は評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならない。
不動産業は徹頭徹尾、成功報酬が貫かれています。
売却する・購入する、売買契約が成立したとき報酬を得ることができます。
いわば不動産屋は「他人の褌(ふんどし)で相撲を取る」存在。
あなたが所有する不動産の売り出し価格を決める権利なんて1ミリもないのです。
不動産屋は、基本的に自分に都合の良い提案をします。
「売却一括査定」で複数社が競合する場合には高めの売り出し価格を提示し、競合する不動産屋がいないと判断した場合は、(売りやすいように)安い売り出し価格を提示します。
競合がいるかどうか分からない場合は、2つの「査定書」をカバンに入れて訪問します。
所有者との会話の中で、競合の有無を確かめてから「査定書」を出しているのです。
あなたが不動産の価格を決める場面は何度もある
あなたが所有する不動産の価格を決める場面は一度きりではありません。
- 物件(不動産)を売り出すときの販売価格
- 売れないときの価格調整(値下げ)
- 購入希望者の指し値の受け入れ
これらのタイミングで不動産所有者の意志を尋ねられます。
不動産会社は、少し高めで売り出すように推奨します。これは上記の1の場面です。
なぜ、高めの価格で売り始めるのかといえば、続く2・3で、値下げ交渉に備える余裕を持っておきたいからです。
自宅を売りだして半年が経過しても、購入はおろか見学さえない場合もあります。
ここで不動産会社は2の値下げ交渉を行います。
あらかじめとっておいた貯金を使うことになります。
最後は3の、指し値交渉と呼ばれるものです。「
200万円値下げしてくれたら購入する」という購入希望者からの要望です。
いずれの場面でも、物件価格の決定権は、あなたにあります。
先述しましたが、不動産屋はアドバイスをするだけです。
一期一会と言いましょうか、不動産取引には、ご縁が大事です。
購入希望金額が法外に安いと感じたとしても、譲歩することも必要でしょう。
「200万円は無理ですが100万円の値引きには応じます」と言った具合ですね。
先方も、そのつもりで、先にキツめのカードを切っているのかもしれません。
どこかに妥協点は必要だろうし、そのために当初から少し高めの価格設定にしておいた筈です。
家を売却する5つの価格
家を売るときには、少し高めの設定をしても、少しずつ下がることがあります。
売主・買主・仲介の不動産会社、3者の思惑がせめぎ合って、5つの販売価格が存在します。
5つの価格を時系列に紹介します。
売主の売却希望価格
これくらいの金額で売れたらいいな!!
売主の希望する売却価格で、5つの価格のなかでダントツに高い金額なのが普通です。(当然です)
住宅ローンの残額・引っ越し代金・住み替え先の購入資金、などが金額の根拠になっていることが多いと感じます。
あとは、「近所の人が◯◯万円で売却した!」なんて噂に期待が膨らんでいるのかもしれません。
他に、不動産屋の査定前に、ポスティング・チラシで期待が高まっている場合もあります。
ある大学教授が、この地域のマンションを希望されています。
沿線の大学に通勤しやすく、住環境の整った、この地域限定です!
【希望物件】3LDK・80平米・3,500万円
よく、ご自宅のポストに投函されているチラシ。
でも、こういうお客様は存在しません。
不動産営業の妄想から作り出したお客様です・・・。スミマセン
不動産屋の査定価格
一括査定サービスなどを利用して、不動産屋に見積もってもらった売却予想金額です。
不動産の査定方法はいくつかありますが、多くの不動産屋が査定で利用しているのは、近隣の過去の成約事例を参考に算出する「取引事例比較法」でしょう。
かなり正確な数字が出ますが、最終的には売却活動を始めてみないと、いくらで売れるのか分かりません。
ちなみに、一括査定サービスを利用すると、複数の不動産屋が競合するため、少しだけ売却相場より高い査定額が提示されます。
なぜ、違いが生じるのか?仕組みを知っておくことも必要ですね。
売り出し価格
実際に不動産を売り出す価格です。
売り出した後に高くすることはできません。
ですから、少し高めの金額からスタートして、反響の様子を見ながら徐々に金額を下げていくのが普通です。
なかなか売れないときには、販売価格を下げることが最も効果的です。(心理的にはつらいのですが・・・)
売出しから、1ヶ月・3ヶ月・半年、これくらいのスパンで価格の改定をするのが理想的です。
購入希望価格
「売り出し価格」イコール「成約価格」にならないのが、売主にとって辛いところでしょう。
買主は、家を少しでも安く買いたいのです。気を悪くしないでください、本気で買う気があるから、価格交渉があるのです。
不動産営業は普通、この値下げ分をあらかじめ織り込んだ販売価格を提示します。「そういえば、そんなこと言われたような・・・」って売主さんが多いんです。
成約価格
売主の売却希望価格と、買主の購入希望価格の調整ができたら、それが成約価格になります。
ここまで来たら、滅多なことでは金額が下がることはありません。
この成約価格が不動産売買契約書にも記載されます。違約金の損害額の基準にもなりますので、もっとも重要な金額と言えます。
売り出し価格の決め方まとめ
不動産査定書に記された物件価格は、あなたの所有する不動産の成績表のように写るかもしれません。しかし、先述したように、不動産会社の都合によって査定価格は上下します。
加えて、市場原理も働くので同じ地域に類似する物件が全くないタイミングで売りだせば、思わぬ高値で買い手がつくこともあります。このあたりの機微が、不動産取引の醍醐味と言えるでしょう。
最もよくないのは、不動産会社の言いなりになってしまうことです。
この営業は、どういう戦略のために高めの価格設定をしているのか?
最初から、安めに売出価格を抑えて短期決戦で行こう!
いろいろな考え方があっていいはずです。
まずは、あなたの意志を尊重する営業と出会うことが大切です。
ほとんどの人が不動産の売却には「一括査定サービス」を利用されます。
一度に多くの不動産営業に巡りあうチャンスです。
非常にもったいないのは、「信頼できそうな人だったから」「大手の不動産会社だから」という理由で、簡単に営業を決めてしまうケースです。
人を見極めるうえでは直感も大事ですが、あなたの直感を裏付けるためにも、より多くの不動産営業に会うことも無駄にならないと考えます。