そこで、まずは不動産屋に話を聞きに行くと、
「一般媒介では、まともに広告できない」と言われてしまいました。
まるで「専任媒介でなければ売ってやらないぞ!」という勢いです。
こんなことってあるのでしょうか?
専任媒介で頼むのが常識で、一般媒介では広告すらしてもらえないのでしょうか?
できれば一般媒介で、複数の不動産屋から家を売り出してもらいたいと考えています。
専任媒介・一般媒介のメリット・デメリットを教えてください。
当サイトにお寄せいただいた、不動産売却に関する質問にお答えしています。
「一般では売れない」は囲い込みへの布石
専任媒介をゴリ推しする不動産営業は少なくありません。
一般媒介を全否定することで、彼らは専任媒介契約を締結しています。
専任媒介を締結すると「自分が売らなければ」という自覚が営業に芽生えるのは事実です。
しかし、営業が力を込めてオススメしたからって、その家が売れるわけではありません。
「営業が薦めたから、その家に決めた」というお客様(買主)はいません。
むしろ、不動産屋の薦める物件を「うさんくさい」と疑うお客様が多いです。
専任媒介や一般媒介といった媒介契約の種類は、家を購入するお客様にとって関係なく。
営業のオススメに関係なく、お客様は希望する条件にピッタリ合う物件を購入します。
不動産営業は自分の営業成績のために専任媒介を薦めます。
他社との客付け競争になったら、のんびり営業できない。勝ち目がないと思っています。
専任媒介では、他の不動産会社が、売主に助言できなくなります。
その売主を独占できるため、都合の良い情報だけを伝え、不都合な事実は隠蔽されます。
「値下げしないと売れない」と脅かせば簡単に値下げできると、不動産屋は考えます。自社で買主をみつける両手取引で2倍近い報酬を得る囲い込みが、やりやすくなります。
専任媒介は不動産屋が有利!
一般媒介でやっと対等に!
媒介契約の種類で、売主さんに言われハッとしたことがあるんです。
やはり、専任媒介って不動産屋にとって都合の良い契約なんだって痛感しました。
たしかに売主さんの仰る通りで、私はぐうの音も出ませんでした。(汗)
同じマンション内で、違うお部屋が売り出されたら、売主さんとしては嫌なもんですよね。
ただでさえ嫌な気分なのに、同じ不動産屋が両方のお部屋を紹介するのは、(売主としては)我慢ならないんでしょうね。
専任媒介は、たしかに不動産会社に都合の良い契約です。
一般媒介では、売主が有利とまで言えません。
一般媒介でやっと対等になるくらいです。
じつは一般媒介の方が広告量が多い理由
一般媒介では、ほとんど広告できませんよ!
専任媒介の物件を優先的に宣伝することになってます!
これは不動産営業が「専任で媒介契約を締結してもらおう」と必死になっているときのセリフです。この言葉に嘘はありませんが、あえて本当のことを隠しているとも言えます。
たしかに、一社の広告量や掲載場所は、一般物件が劣るでしょう。
しかし一般媒介では、複数の不動産会社から同時に売り出すことができます。
1社による10の広告量より、
5社から5ずつ広告を出せば、結果的に2.5倍の広告量に。
狭いところで深く掘り下げるか、浅くても広く掘るかの差になります。
現状の不動産広告はインターネットが集客の生命線。
ポータルサイトはもちろん、ローカルな物件サイトにも数多く掲載できる一般媒介が有利です。
一般媒介のメリット
媒介契約名 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
---|---|---|---|
売り出す不動産屋 | 1社のみ | 1社のみ | 何社でも |
売主が買い主を 見つける |
できない | できる | できる |
売却状況の報告 | 必ず状況を報告 1週間に1回以上 |
必ず状況を報告 2週間に1回以上 |
報告義務なし (売主が訊けばOK) |
レインズへ登録 | 必ず登録 (5日以内) |
必ず登録 (7日以内) |
登録義務なし (頼めば登録) |
宣伝広告費 | 多い | 多い | 一社あたりは少ない |
囲い込みの心配 | あり | あり | なし |
値下げ圧力 | あり | あり | なし |
複数の不動産会社から売り出す一般媒介のメリット
- 能力が低く「売れない営業」に束縛されない
- 「売れる営業」に当たる確率が高い
- 一社より複数社で広告したほうが絶対量が増える
- 囲い込みによる値下げ圧力がない
メリット1、「売れない営業」に拘束されない
不動産営業は「売れる営業」と「売れない営業」の能力の差が激しく存在します。
専任媒介でも運良く「売れる営業」に担当してもらえたらラッキーです。
しかし売れない営業にあたったら、いつまでも売れないばかりか、値下げしなければ売れません。
一般媒介から始めれば、「売れない営業」のリスクを軽減できます。
複数社で同時に売り出すことで、「売れない営業」が一定数いるかわりに「売れる営業」に当たる確率もあがります。
メリット2、一社より複数社で広告したほうが絶対量が増える
先に説明した通り、多くの不動産会社で物件掲載したほうが買主の目に触れる確率は高まります。
そもそも不動産会社は選り好みするほど広告枠が少なくありません。「40物件掲載で月に◯◯万円」と言うように掲載物件数に応じて広告料金が決まっていて、不動産会社は必死に掲載枠を埋めようとしています。
専任だろうと一般だろうと掲載することに変わりはありません。
メリット3、囲い込みによる値下げ圧力がない
不動産屋の視点 | 一般媒介 | 専属・専任 |
物件への責任 | 気楽 | ある |
売主への報告 | ないので楽 | 面倒 |
レインズ登録 | 他社がするなら | する |
契約更新 | ないので楽 | 面倒 |
物件広告 | 物件しだい | 義理 |
囲い込み | できない | するかも |
値下げ | できない | させやすい |
スピード | 急ぐ | のんびり |
一社に専任で媒介を依頼すると、不動産屋には競合するライバルがいなくなります。売主をコントロールすることができるのが専任媒介を取得する不動産会社のメリットです。
不動産会社にはメリットですが、売主にとってはデメリットでしかありません。
他社からのお客様の紹介を、勝手に不動産屋が断ってしまったりするんです!
そして、十分に売主を焦らせてから・・・、こう言うのです。
不動産会社による囲い込みに関しては、以下で詳しく紹介しました。
一般媒介のデメリット
一般媒介のデメリットを紹介します。
やはり、専任媒介と比較して、一般媒介が劣っている面にフォーカスします。
媒介契約名 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
---|---|---|---|
売り出す不動産屋 | 1社のみ | 1社のみ | 何社でも |
売主が買い主を 見つける |
できない | できる | できる |
売却状況の報告 | 必ず状況を報告 1週間に1回以上 |
必ず状況を報告 2週間に1回以上 |
報告義務なし (売主が訊けばOK) |
レインズへ登録 | 必ず登録 (5日以内) |
必ず登録 (7日以内) |
登録義務なし (頼めば登録) |
宣伝広告費 | 多い | 多い | 一社あたりは少ない |
囲い込みの心配 | あり | あり | なし |
値下げ圧力 | あり | あり | なし |
- 不動産会社に売却状況の報告義務がない
- レインズへの登録義務がない
- 広告量が少ない(一社あたりは)
- 営業の責任感が希薄
デメリット1、不動産会社に売却状況の報告義務がない
一般媒介には、販売状況の報告義務がありません。
専任媒介では、宅地建物取引業法により、報告の頻度が決められています。
ただ、専任の場合の報告といっても、実際はたいした内容ではありません。
むしろ、一般媒介であっても、売主から担当に電話して
いま、どんな状況ですか?
と尋ねれば、ありのままに教えてくれます。
むしろ、報告義務のためにつくられた嘘などが入らないので、本当のところが聞けます。
デメリット2、レインズへの登録義務がない
宅地建物取引業法では、専任媒介のレインズへの物件登録が、義務付けられています。
では、一般媒介ではレインズに登録できないのかといえば、違います。
一般媒介でも、レインズには登録できます。
というより、一般媒介でもレインズに登録するのが普通です。
ただし、確実にレインズに登録してもらうためには、一般媒介を締結する際に媒介契約書の特約欄にレインズ登録を記載してもらいましょう。
デメリット3、一社あたりの広告量が少ない
これは、不動産会社によって方針が違います。
専任・一般にかかわらず、売れる物件を掲載する会社もあります。
ただし、確実に言えることは、複数の不動産会社と媒介契約を締結することで、広告量は増大します。
1社よりも2社、2社よりも3社、と増え続けます。
デメリット4、営業の責任感が希薄
一応、デメリットに挙げましたが、営業の責任感は、売れる・売れないに影響にしません。
営業が責任感を持てば売れるというものではありませんし。
ゴリ推ししたから売れたという話も聞いたことがありません。
そもそも、売れない営業さんに、いくら責任を持たれても意味がありません。
責任感がなくても、売れる営業さんに担当してもらったほうが10倍くらい効率がいいでしょう。
一般媒介の注意点・よくある質問
一般媒介契約で複数の不動産会社から売り出す注意点と、よくある質問を紹介します。
- 売り出す全ての不動産会社と一般媒介を締結
- 仲介手数料は、専任媒介も一般媒介も同じ
- 最終的に売った一社にだけ仲介手数料を払う
- 売れなくても「広告費を請求」されることはない
- 一般媒介の「明示型」「非明示型」どちらでも構わない
- 売り出し条件(価格など)は全社で同じにする
- 価格変更(値下げ)する場合には全社に通知する
- 申し込みが入り、売買契約予定になったら全社に通知する
不動産売買に強い不動産会社をピックアップするには、一括査定サービスを利用すればOKです。
査定に来てくれた不動産会社と、片っ端から一般媒介を締結して構いません。
訪問査定も媒介契約も、すべて無料です。物件の広告費用もかかりません。
物件が売れるまで、売主は不動産屋にお金を支払うことはありません。
2社に頼んでも、10社に一般媒介を頼んだとしても、売主は、実際に売ってくれた1社だけに仲介手数料を支払うだけです。
不動産売買の仲介は、完全成功報酬。売れなかった不動産屋はすべてタダ働きに終わります。
注意点に記しましたが、不動産会社には、全て同じ条件で売り出してもらわなければいけません。A社が4000万円・B社は3900万円など、条件に差をつけてしまうのはNGです。
売却途中で、値下げをするときには、一般媒介を締結している全ての不動産会社に「100万円値下げします」と知らせます。伝えるのは電話一本でOKです。書面を作成したり、媒介契約を再締結する必要はありません。
申し込みが入って、契約予定になったら、必ず他の会社にも連絡してください。
一般媒介の契約に必要な書類と準備
- 運転免許証など、本人確認ができるもの
- 登記済権利証 もしくは 登記識別情報通知書
- 印鑑(シャチハタは不可・三文判で結構です)
※印鑑は、実印でなくて構いません。印鑑証明書も不要です。
ただし、売買契約や引渡し時には必要です
媒介契約は、不動産会社と売主が締結する契約。
依頼者が、売主本人であることを証明するために、1と2が必要です。
権利証は、コピーをとったりしません。
チラッと拝見するだけで済みます。
権利証を紛失している方は、契約の際にお申し出ください。
司法書士に事前に相談しておかなければなりません。
あと、契約行為なので印鑑が必要。
でも、実印でなくても大丈夫です。
一般媒介の契約期間と契約解除の方法
専任媒介、専属専任媒介の契約期間は3ヶ月まで。
一般媒介契約は契約期間を定めません。
宅地建物取引業法
(媒介契約)第三十四条の二3 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
一般媒介には契約期間がありませんので、専任媒介につきものの契約更新がありません。
専任媒介では、3ヶ月ごとに契約更新をしますが、一般媒介は自動更新されているのではなく、ずっと、契約が続いているのです。
【追記】一般媒介も3か月ごとに更新する不動産会社の方が多いことが分かりました。
不動産会社、A B C Dの4社とそれぞれ一般媒介を契約していて、A社が仲介したお客様で成約したときには、売主が B C D社に連絡して、一般媒介が終了します。
書面などを取り交わす必要がなく、担当者に「他社で売れました」と電話をするだけで済みます。
A社の担当者が売主の代わりに、B C D社に電話してくれることは(基本的に)ありません。
B C D社との媒介契約は、それぞれ売主と交わされたもので、A社は契約の当事者でないからです。
何らかの事情で、売るのをやめた場合も、同様に電話連絡をする事で一般媒介を解除することができます。
仲介の現場では「売りやめ」と言っています。
売りやめにするときには、理由を尋ねられるでしょう。
電話をする前に、売りやめの理由を考えておいた方がいいですね。
一般媒介で売るときは内覧調整が大変?
一般媒介で、複数の不動産会社から売り出す場合には、内覧のスケジュール調整が大変だと言われています。
人気物件が安く売り出された場合には、一週間に5件くらい内覧の申し込みが入って、たしかに忙しいかもしれません。
でも、一社に専任で任せて、いつまで待っても内覧客が来ないより、全然いいですよね!
不動産営業の経験から言うと、
だいたい5件の内覧があれば、そのうちの1件から申し込みが入ります。
一般媒介で売主が忙しいのも、ほんの一時で、嬉しい悲鳴といえるのではないでしょうか?
一般媒介の物件は広告できません!