マンションの売却では、「売る」ことと「売れる」ことには明確な差があります。
私の場合「売れる」ことから経験していき、徐々に「売る」ことがわかってきました。
「売れる」とは、売れてしまうこと。たまたま案内したお客様に感度が出て(業界用語:「気に入って」という意味)、お薦めしていくうちに「買いたい」と言われた場合です。
また、販売価格が相場よりも安く、早い者勝ちの「誰でも売れる物件」も同じです。条件に合うお客様を担当していれば、案内さえすれば「売れる」のですから簡単です。
「売る」方法には二つある
「売れる」に対して「売る」というのはどういうことでしょうか?
「売れてしまった」から一歩進めて、もっと能動的に「売る」ことを突き詰めていきます。具体的に言うと、長期間売れなかったマンションを売却したり、相場よりも明らかに高く売りにくいマンションを売却することです。
ただ、「売った」のか「売れた」のかは区別のしようがありません。「私が売った」という不動産営業の自己満足に過ぎないのかもしれません。
しかし、私たち不動産営業は、自動販売機のようには、なるまいと努力しています。
お客様が勝手に選んだものを、ただ契約するだけであれば、そのうち人工知能(AI)に仕事を奪われてしまいます。
売るための手法は二種類で、心理的アプローチ・物件価値の向上です。
心理的アプローチとは?
心理的アプローチというと仰々しい感じがしますが、やることはシンプルです。要はお客様を買う気にすればいいのです。
- 近所で人気のパン屋さんや有名店を一緒に見に行く
- 人気のある物件だと刷り込む
- 他のお客様に売れそうだと伝える
- 価格交渉(値下げ)ができるかもと伝える
- 住宅ローンの事前審査に申し込む
- 月々のローン返済額と賃貸物件を比較する
意外かもしれませんが、不動産屋は物件だけを紹介しているわけではありません。物件のある街自体をアピールして「この街に住みたい」とお客様に思っていただくのが第一歩です。
ですから、お子さんの通う小学校の評判をお話したり、有名なパン屋さんに連れて行ったり、カフェの前を通って雰囲気を楽しんでもらいます。
不動産屋は、嘘をついてお客様を煽ったり、強引に契約を迫ったりするイメージを持たれがちですが、そればかりではないのです。(ちょっとは嘘もつきますけど・・)
あとは、住宅ローンの事前審査を先に通しておくことも、お客様の買う気スイッチを入れますね。
あなたは銀行がいくらまで貸してくれるか知っていますか?
自分自身で答えられない人がほとんどです。ですから少し高めの物件を選んで住宅ローンの審査を出すんです。
すると、「銀行は5000万円まで融資してくれるのか!」
いきなり不動産購入が現実感を持ってお客様に迫ってくるのです。
住宅ローンの金利は安いですから、同じ支払金額の賃貸マンションを内覧して比較してみるのも効果的です。賃貸マンションは建具一つをとっても安っぽく見えるものが多くて、分譲マンションのグレード感とは比較にならないんです。
「やっぱり買ったほうが得だな!」
お客様に、こう思ってもらうのが心理的な「売る」アプローチです。
物件価値の向上とは?
お客様を買う気にさせたら、次はあなたのマンションを選んでもらえればいいのです。
安くすれば売れる?
たしかにその通りです。でも値下げして買ってもらっても売主の本意ではありません。
ではどうすればいいのでしょうか?
物件の価値を向上させて、「あの物件がこの価格なら」と相対的に安いと感じてもらえればいいのです。
- 整理整頓
- 必要ならばリフォーム
- 見た目も大事、ステージング
- マンションのメリットを再確認
整理整頓は、マンション売却で最も大事なところ。安くても売れればいいのであれば汚いままでも構いません。しかし、少しでも高く売りたいのであれば、徹底的な不要品の処分や清掃は必須です。
売り出す家の清掃は、売主自身がしなくてはいけません。不動産屋がお手伝いすることができないんです。不動産屋だけ頑張っていても物件に魅せる要素がなければ平凡な内覧で終わってしまいます。
感度の出る内覧は、売主と不動産屋が協力することで、作り出すことができるのです。
とはいえ、お忙しいのもまた事実。水回りの清掃はプロの業者に頼んでしまうのも一つの手です。投資した以上に回収できることも少なくないのでぜひご検討下さい。