これまで、不動産屋にしか閲覧できなかったレインズ(REINS:不動産流通標準情報システム)。
レインズへの登録状況を、売主が閲覧・確認(チェック)する機能ができました。
これで、不動産屋が両手狙いで行う囲い込みを売主が監視・チェックできます。
レインズの不動産(物件)検索システム
新卒で不動産会社に入社すると、初めに覚える仕事はレインズのチェック。
私もはじめは不動産業界のシステムがまったく分かっていませんでした。
スゴイ! レインズって、お隣りの不動産屋の在庫(売出し物件)が、丸見え!
レインズがあれば、自分に売出し物件がなくても、家を紹介して売ることができる!
こんな風に感動していました。
売り出し物件を隠すために、わざとレインズに登録しない不動産屋があることは、あとで知ることになります・・・。
それだけじゃなく、レインズに登録しても、紹介させてくれない不動産屋も少なくないんです。
レインズとは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システムの名称です。
レインズは、どの地域で、どんな物件(不動産)が売り出されているのかを知ることができます。
販売価格・平米数・坪単価・用途地域・所在地・駅からの距離・築年数、など、売り出している物件詳細がすべて網羅されています。
競合する物件調査もできますので、レインズは自社の販売戦略を練るためにも使うことができます。
レインズの登録は法律で義務付けられている
不動産屋が売主との媒介契約を締結したら、レインズに売り出す物件を登録することが義務付けられています。これは「宅地建物取引業法(宅建業法)」第三十四条の二に定められています。
(媒介契約)
第三十四条の二
5 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。
複数の業者へ依頼 | レインズへの登録 | 状況の報告義務 | |
---|---|---|---|
一般媒介 | できる | 業者の任意 | 業者の任意 |
専任媒介 | できない | 業者の義務(7日以内) | 2週間に1回以上 |
専属専任媒介 | できない | 業者の義務(5日以内) | 1週間に1回以上 |
専属専任媒介契約・専任媒介契約を締結した不動産屋は、レインズへの物件登録が義務付けられています。ただし、一般媒介の場合、レインズへの登録は「業者の任意」になるので、登録しなくても許されます。
宅建業法で決まっているから、必ずレインズに物件を登録しなければいけません。
しかし、レインズ登録のルールを守らない不動産屋も少なくありません。
なぜ、そんな不正が起こるのか?
登録しなくても営業停止や免許取り消しなど、厳しい罰則規定が宅建業法にないからだと考えます。
レインズに登録しない不動産屋の悪い手口
なぜ不動産屋は、媒介を結んだ物件をレインズに登録しないのでしょうか?
レインズに登録すれば、他の不動産屋に、条件がピッタリなお客様がいるかもしれません。
しかし、他社の買主に買われたら、不動産屋の報酬(仲介手数料)が片手取り引き(売主だけ)になってしまいます。
もし、自分の会社で買主も見つけることができれば、売主と買主の両方から報酬(仲介手数料)がいただける(両手取り引き)ので、一回の不動産売買契約で2倍稼ぐことができます。(片手取り引き・両手取り引き、どちらでも手間は変わりません)
以下の表は、大手不動産会社の取引件数と手数料率の平均を示したものです。
- 片手契約の場合、3%+6万円
- 両手契約の場合、6%+12万円
契約の多くが片手仲介ならば、平均手数料率は3%に近く。
両手仲介が多いと、平均手数料率は6%に近づきます。
つまり、平均手数料率が5%を超えているのは、両手仲介が多い証拠です。
名称 | 平均手数料率(%) | ||||
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
三井のリハウス | 5.56% | 5.31% | 5.22% | 5.10% | 4.98% |
住友不動産販売 | 5.10% | 5.28% | 5.13% | 5.27% | 5.25% |
東急リバブル | 4.11% | 3.99% | 4.71% | 4.17% | 4.83% |
野村不動産グループ | 3.63% | 3.93% | 4.06% | 3.95% | 4.32% |
三菱UFJ不動産販売 | 3.66% | 3.93% | 4.07% | 4.03% | 4.23% |
三井住友トラスト不動産 | 3.82% | 4.08% | 4.22% | 4.09% | 4.10% |
みずほ不動産販売 | 3.91% | 2.65% | 4.21% | 3.94% | 4.00% |
大京グループ | 4.35% | 4.85% | 4.76% | 4.61% | 4.55% |
小田急不動産 | 4.48% | 4.53% | 3.77% | 4.45% | 4.49% |
センチュリー21グループ | 4.05% | 4.71% | 4.73% | 4.69% | 4.60% |
大手不動産会社は、自社の集客力に自信があるため、他社に紹介させない「囲い込み」に走りがちです。
レインズの登録証明書を発行して、すぐ削除する不動産屋
レインズに不動産物件を登録すると、不動産屋は「登録証明書」をダウンロードすることができます。宅建業法では、不動産屋は「登録証明書」を売主に渡すことになっています。
(媒介契約)
第三十四条の二
6 前項の規定による登録をした宅地建物取引業者は、第五十条の六に規定する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない。宅地建物取引業法より
でも、このレインズに登録した証明書をすぐに削除してしまう不動産屋もあります。証明書を発行するためだけに登録したのですから、当然かもしれません。
2016(平成28)年1月から、売主がレインズの登録をチェックできるようになりました!
形だけレインズに登録
しっかりレインズに物件登録して、不動産検索もできるようになっているのに、紹介しづらい物件もあります。形式的にレインズに登録してあって、紹介させる気がまったく感じられない販売図面です。
ちなみに販売図面とは、他の不動産屋がレインズからダウンロードして、自分のお客様に紹介するためのチラシです。
先輩、この業者の販売図面、見てくださいよ!
間取りが真ん中にチョー小さく表示されてて、あと全部が余白なんですけど・・・。設定とか、間違えちゃったんですかね~?
お前、その販売図面で、自分のお客様に紹介できるか?
え~!?
無理ですよ!
馬鹿にしてるのかと思われちゃいます・・・。
つまり、そういうことなんだよ!
他社に紹介させる気なんか、ないってことだ!
なるほど!
囲い込みってやつですね!
こんな不動産屋も、3ヶ月くらい売れないと、まともな販売図面をレインズに登録し直します。自社だけでは売れなかったんですね・・・。
売主ならばチェックできるレインズへの登録
冒頭で紹介しましたが、ついに売主がレインズに登録している(自分の)売出し物件を閲覧することが出来るようになりました。
レインズ閲覧の手順
- 媒介を締結した不動産屋から「登録証明書」を受け取る
- http://www.reins.or.jp/にアクセスする
- 画面右下の「売却依頼主向け」からログイン
- 「登録証明書」記載の、確認用ID・パスワードを入力
- 売却依頼物件を閲覧
レインズ閲覧の注意点
- 売主自身の売却物件しか閲覧できない
- 専任媒介・専属専任媒介しか閲覧できない
- 23時~7時の時間はレインズのシステムが休止
- 販売図面は確認できない
- 2016年1月以降に登録した物件しか閲覧できない
不動産業者からもらう「登録証明書」の見本
レインズの不動産検索画面
レインズを閲覧する流れ
売主のレインズ活用のまとめ
家を売り出した売主は、登録証明書で、確実にレインズに登録されているかを確認したほうが良いでしょう。
レインズに登録しても、他社の紹介を断る不動産屋もありますが、登録さえしない不動産屋もあるのです。
レインズに登録されているのに、なかなか家が売れない場合には、別の可能性を疑いましょう。